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本記事の目的
先日、「SoftBank World 2024 孫 正義 特別講演 ~超知性が10年以内に実現する~」を視聴しました。この講演では、未来のテクノロジーについての大きな可能性や、その実現に向けた道筋が語られていて、とても刺激を受けました。
これをきっかけに、エンジニアとしてこれからどのように生き、未来の技術と向き合っていくべきかを改めて考える機会になりました。この講演を通じて感じたことや得た学びを、自分なりに整理してみたいと思います。
動画URL
AGI(汎用人工知能)がやってくる
AGI(汎用人工知能)とは、人間の知能とほぼ一対一になるというレベルのことを言います。
孫さんは、AGI(汎用人工知能)が人間の知能レベルに追いつくのは、あと数年(2~3年)内だと考えているようです。会話の相手が本当に人間なのか、それとも壁の向こうにいるのがAIなのか分からないほど、驚くほど自然なコミュニケーションが可能になると予想されています。
AGIの進化のステップを見てみると、次のような段階が想定されています:
レベル1:人間とほぼ同じレベルで自然に会話ができるようになる
レベル2:あらゆる分野で博士号レベルの知識を発揮できる
レベル3:エージェント機能を備え、人間に代わって作業をこなす
レベル4:独自に発明や新しいアイデアを生み出せるようになる
レベル5:複数のAGIが協力して、非常に複雑な課題を自律的に解決する
これからの技術の進化を考えると、ワクワクすると同時に、どう向き合っていくべきかを考えさせられます。
人間の脳とAIの比較を行うと、以下のようになります。
- 人間の脳内には約1,000億個のニューロンが存在し、ニューロン同士の結合部分であるシナプスを通じて情報が伝達・記憶・思考される。シナプスの数は約100兆個にも及ぶ。
- 脳が「考える」とは、シナプスが新たな結合を作ったり外したりしながら電気信号を伝えるプロセスである。
- 生物学的制約により、人間のシナプス数は今後増えることはないとされている。
- 対して、生成AIはモデルの規模や計算資源の拡大によって「知能」を拡張し続けることが可能。
ASI(超知能)の世界
ASI(Artificial Super Intelligence)は、AGIをさらに上回る桁違いの知能レベルを持ち、AGIの1万倍程度の知能とも言われています。このASIも、10年以内に誕生するのではと孫さんは推測しておられます。
情報検索→検索→考える
従来のインターネット検索は、キーワードに基づいて情報を提示するだけで、その情報を理解して使うのは人間側の役割でした。
一方で、ChatGPTのような生成AIは、検索結果を要約したり再構成したりすることで、まるで「理解」しているかのように振る舞います。ただ、初期のモデルは実際に「考える」わけではなく、与えられた情報を基に応答を生成しているだけでした。
そんな中、新しく登場した「o1」というモデルが注目されています。このモデルは、単なる情報検索や要約を超えて、実際の思考プロセスを模倣し、より高度な問題解決を可能にしたとされています。
例えば、博士号レベルの物理・科学・生物問題への正答率を比べてみると
GPT-4o:56%
専門家:70%
o1:78%
さらに、「考える」力が重要な数学の分野では、
GPT-4o:13%
o1:83%
コーディング問題でも、
GPT-4o:11%
o1:89%
という結果で、大幅な性能向上が見られました。o1では「考える」力が備わったことで、情報検索の速さだけでなく、深く考える能力が大きな特長となっています。
思考プロセス:COT(Chain of Thought)
COT(Chain of Thought)とは、思考を段階的に積み重ねていく手法のことです。これは、3段論法のようなロジックを何十、時には100ステップ以上も連鎖させることができる高度なプロセスを指します。
このように長大な思考過程を持つCOTには、能力の向上だけでなく、倫理観や安全性への配慮も組み込まれています。AIの能力があまりに高まりすぎると、人類にとって脅威となる可能性もあります。そのため、COTでは倫理的・安全的なフィルタリングが同時に行われるよう設計されています。
強化学習とエージェント
強化学習では、AIの「エージェント」が試行錯誤を繰り返しながら学んでいきます。良い結果が得られると報酬(スコア)が与えられ、それを基にエージェントは報酬を最大化する行動戦略(Q関数)を学習・更新していきます。
ただ、同じことを繰り返すだけでは進歩がないため、あえて未知の行動を試してみる「探索」も行われます。この探索によって、新しい解決策や思いがけない発明的なアイデアが生まれることもあります。
さらに最新のo1モデルでは、この強化学習を数千ものエージェントが同時並行で行っています。それぞれのエージェントが数億回もの試行を繰り返しながら、最適な戦略を習得していく仕組みです。この大規模な試行錯誤が、AIのさらなる進化を支えています。
パーソナルエージェントの未来
現在のAIは、ユーザーが問い合わせをして初めて応答する仕組みですが、将来的にはAIエージェントが各個人に寄り添い、自発的にサポートする存在になると予想されています。
つまり、未来には「パーソナルエージェント」と呼ばれる、各個人専用のAIが常にユーザーを観察し、理解した上で、必要な時に先回りして作業を行ったり、提案をしたりする世界が訪れるかもしれません。このようなエージェントが日常生活に溶け込んで、私たちの行動をより便利に、そして効率的にサポートしてくれることが想像できます。
終わり
AIの急速な進化に、ワクワクする気持ちがある一方で、これからのエンジニアライフを見つめ直す良いきっかけにもなりました。「アプリを作れるだけ」のエンジニアでは、今後やっていけなくなりそうですね。コードを書くことに関しては、AIの方が早く、正確にできてしまう時代が来ていると感じます。
これからのエンジニアは、単なる「実装者」や「保守者」ではなく、ビジネスを支えるために技術を活用する「問題解決のプロ」や、複雑な技術的な選択肢を導ける「技術の専門家」としての価値が求められる時代になるのではないでしょうか。
従来のやり方に固執するのではなく、自分の得意分野や最新技術の領域に挑戦し続け、学び続ける姿勢が、キャリアを長期的に発展させる鍵となりそうです。
それでは、ここまでお付き合いいただきありがとうございました:)
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